2021年3月21日~27日、いろは教室にて習字クラスの展覧会を開催しました。
第一回目の開催ということで、0からの手探りの準備となりましたが、なんとか形になり、無事開催できることができました。
期間中、ご来場いただいたみなさまに感謝申し上げます。
毛筆半紙課題について
今回の展覧会では、この1年の間に生徒の皆さんが練習してきた毛筆半紙課題、硬筆課題、そして3年生以上の生徒の書き初め作品の、それぞれの秀作を展示しています。
毛筆半紙課題について
普段の毛筆練習課題となる半紙課題ですが、小学低学年はひらがな二文字、中学年から漢字二文字が中心になります。
低学年のうちは道具の使い方にも慣れないため、半紙の置き方、筆の持ち方、墨のつけ方、一挙一動が練習になります。しかし、これら一つ一つの当たり前を積み重ねて行くことが習字に限らず、後の基礎・基本に繋がっていくのでしょう。
はじめのうち、線を「ぬる」ように書いてしまいがちですが、小学中学年以降は画を「引いて」書けるようになってきます。習字の上手い下手となると、その字の形に目が行きがちですが、むしろ一画一画の線質に、書字の上達や精神的な成長が見えます。
電子的な情報交換が中心になってきた昨今、手書き文字を練習することの意味や「書は人なり」という考え方への是非もあります。しかし、やはり字には書いた人の個性が色濃く表れ、また書を学ぶことは心身の成長に資するものがあると、私は思います。子どもたちの成長はあっという間で、書く文字すらも瞬く間に変化していきます。そう考えると、今彼らが書いた目の前にある文字も、書いたその瞬間にしか書けなかった文字であり、その時の内面精神を表したものだと言えるかと思います。
硬筆課題について
硬筆課題については目下、試行錯誤中です。今年は短い言葉をマスのあるノートで一文字ずつ練習するのを共通課題として、加えて各学年や習熟度に応じて詩などのまとまった文章を作品にする、という形を試みてみました。
普段使っている鉛筆で丁寧に字を書く練習をする硬筆は、より実用的な一方で、集中力とモチベーションを保ち続けるのが大変な授業です。また、字を上達させるにはよく見て、よく聞いて、よく書くしかありませんが、子どもたち同じ字を書き続けると緊張感が切れてすぐ飽きてしまいます。そこで課題の種類を増やし、綺麗な紙に作品を作るという形にすることで、気持ちを切らさず一字一字をゆっくり丁寧に書いてもらえるようにと課題設定には苦心したつもりです。
読みやすい字をいうのは一つ一つの字の形がしっかり取れているだけでなく、字の大きさ、中心が揃っているかといった要素も重要です。そのため今後も、マス練習だけに偏るのではなく、罫線だけの紙に書いたり、文字数もいろいろなものに挑戦してもらいたいと思っています。
拙作について
一番大きいのは全紙と呼ばれるサイズの紙で、457×570mmです。
他二つはその半分で、半切と呼ばれるサイズの紙です。
全紙に書かれているのは金文という字体で、3000年以上前の中国、殷から漢という時代に作られた文字です。青銅器に鋳込まれ記されていたもので、甲骨文字とあわせて現代の私たちが使っている漢字の源流となった文字です。
今に残っている金文をもとに、それを全紙に書いて作品にしたのですが、(これを臨書といいます)、この文も青銅器に書かれていたもので、王の祭祀について記録を記してある……ようです。
素志與白雲同悠、高情與青松共爽 融王
心志はかの白雲の如く悠々、性情は青松の如くさわやかである。
書いた言葉のわりに荒々しい線ですが、これは草を乾燥させて作った筆で書いたものです。穂先がまったくまとまらないので書くのが大変でしたが、普通の動物の毛では出せない線が出ておもしろい感じになったのではないでしょうか。
世路羊腸千里曲、功名蝸角幾人間 越王
人生行路は羊腸の如くつづら折りではてしない。功名を求めて蝸牛角上の争いをどれほど多くの人々が苦しんだことであろうか。
「羊腸」や「蝸角」(かたつむりの角)といった言葉が面白かったので書いてみました。